観光MaaSの現状と期待
観光MaaS推進事業において、マイクロモビリティを活用した取組が各地で進んでいる。令和8年度事業では、秩父・横瀬地域において、LUUP等を活用し、観光地における二次交通の高度化や周遊性の向上を目指す取組が採択された。
https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo12_hh_000513.html
鉄道やバスだけでは補いきれない「ラストワンマイル」を埋める手段として、こうした新しいモビリティが果たす役割は大きく、制度の趣旨にも合致した先進的な試みといえる。
現場で直面する「利用の壁」
一方で、現場を見ていて感じるのは、こうした取組がすべての利用者にとって同じように使いやすいか、という点である。マイクロモビリティは、スマートフォンでの操作を前提とし、一定の身体バランスや反射的な判断を求められる場面も少なくない。そのため、高齢の方にとっては心理的・身体的なハードルが高く、「使える選択肢」として認識されにくい可能性がある。
観光MaaS推進事業は、単なる交通手段の高度化を目的とするものではなく、誰もが分かりやすく、使いやすい移動環境を整備することで、観光周遊や消費の拡大につなげる制度である。制度の本来の趣旨を踏まえれば、特定の利用者層に偏らず、年齢やデジタルへの親和性の違いを含めて包摂する、いわゆるユニバーサルな設計が重要な視点となる。
制度の本来の目的とユニバーサルな設計
この点から考えると、マイクロモビリティは「万能な解」ではなく、あくまで選択肢の一つとして位置づけることが現実的ではないだろうか。たとえば、高齢者にも利用しやすいオンデマンド交通や循環バス、タクシーとの連携などを組み合わせることで、利用者ごとに適した移動手段を選べる構造をつくることができる。単一の手段に依存するのではなく、複数のモビリティが補完し合う形で初めて、観光MaaSは「誰にとっても意味のある仕組み」になる。
複数のモビリティによる補完と共生
新しい技術やサービスをどう導入するか以上に重要なのは、それによってどのような移動体験を、どの層まで届けたいのかという視点である。観光MaaSの次の段階では、先進性と同時に包摂性をどう両立させるかが問われているように思う。制度と現場を往復しながら、その問いに向き合い続けることが、持続可能な地域交通や観光の姿につながっていくのではないだろうか。

